意外と知らない『TOEICと英語力』の関係とは?

TOEICと英語力の関係

「TOEICスコアが高い=英語ができる」は本当か

今や国内の年間受験者数が約266万人(※1)の英語検定試験の一つ「TOEIC」。なぜこんなに受験者数が多く人気なのでしょうか。

ここではTOEICの中でも一番受験者の多いTOEIC(L/R)について解説します。

※1)2018年度の受験者数
TOEIC(L/R)・・・2,456,000人
TOEIC(S/W)・・・39,000人
TOEIC  Bridge・・・165,000人

TOEICのテストは年に10回ほど全国各地でテストが開催され、その受験料もお手頃、という点でとても気軽に受験できる英語力検定試験の一つです。

書店に行けばTOEIC関連本で書店の一部の棚が埋め尽くされているほど膨大な種類があり、人気の高さが伺がえますね。

日本の企業も採用の基準にTOEIC(L/R)のスコアを用いているところも少なくありません。そのため、日本では「就職に有利に働く」という理由もこの受験者数を後押ししているようにも思います。

積み重ねた本
積ん読になっている本はいっそのことメルカリで売ってしまおう

しかし日本で絶大な人気のTOEIC(L/R)、実は日本と韓国以外ではそのスコアの高さは大した効力を発揮しません。

アメリカでは大学入学に必要なのはTOEFLやIELTSのスコアであり、オーストラリアやイギリスでも同様にIELTSが用いられています

イギリスに至ってはTOEICは信用すらされていません。(←ビザ取得のための試験で組織的な不正が発覚したため)

かと言ってTOEIC(L/R)がまったく英語力を測る指標として役立たないというわけではありません。

ただ、多くの日本人がTOEIC(L/R)に過大な評価と誤解をしている点があることをここでは伝えたい意図があります。

特に海外留学や海外勤務など未経験の方、腰を入れて英語勉強をした経験のない方だと、「TOEIC(L/R)高得点=英語力高い=英語ペラペラ」だと誤解している人が多いようです。

それでは、TOEIC(L/R)とは一体どのようなテストなのでしょう。

「リーディング」と「リスニング」のテストで、出題内容は英文メールや電話応対など、仕事をする上で通常の実務ルーティンに関することが多いです。一方、学術や政治経済に関することは皆無です。

そして、試験時間に対して問題数が多いので、じっくり聞いたり読んだりする「分析力」は測ることはできませんが、「瞬発力」は測られます。

回答はすべて4択のため、正確に理解できていなくても点数が取れる可能性があります

リスニングテストに関しては、回答の選択肢を先読みするなどテクニックに左右される一面があります。さらに答案を持ち帰れず、回答例もないためフィードバックができません

マイク
スピーキングのテストの採点はなかなか難しいのだ

そしてこのテストでは、「スピーキング」や「ライティング、和訳」もありませんのでそういった力は当然ながら測ることはできません。

こういった内容のテストのため、測れる英語の力はとても限定的な部分になります。

TOEIC(L/R)スコアが高くても英語で会話ができない人を見つけることは容易なくらい、TOEIC(L/R)スコアと実際の英語力には大きな隔たりがあります。

イヤホン
質の良いイヤホンは発音の細かな違いまで聞くことができる

TOEICで測定できる力を正確に知ることで、英語力アップに活用できる

ここまでTOEIC(L/R)の内容について簡単に解説したことで、「英語力」という広い概念の中でも、TOEIC(L/R)がどういった力を測ることができるテストなのか、その全貌がだんだん見えてきたことでしょう。

繰り返しになりますが、TOEIC(L/R)のテストでは「ビジネスの場における日常の実務」に関する内容が出題されています。

その中でも、「リスニング」と「リーディング」の力が試される、ということです。「英会話力」ではないですよ。

夕方読書する少年
読み書きは話すことよりも知性の高さを表す

そしてテストでは、じっくりと考える時間はそれほど与えられていないため、瞬時に判断する力も試されています。

以上のことから、TOEIC(L/R)は日常のビジネスシーンにおいて、ある程度対応し得る「聞く力」と「読む力」測れる、ということです。

一方、『話す、書く、和訳、英作』などの力は測れません。

企業がこういった点を理解して採用基準に用いているとすれば、その企業への応募にTOEIC(L/R)のスコアは大変有効に働くでしょう。

英語を話せる・翻訳ができる人材が欲しいという企業で、TOEIC(L/R)のスコアを条件として提示されている場合、スコアを持ち合わせたうえでスピーキングや英和訳の力もアピールできないと実際の業務に着いたときに苦労することになるでしょう。

企業側は、英語の電話応対やミーティングがある、レポートや文書を作成するなど、フォーマルな英語で話す、書く、などの業務内容に対応できる人材が欲しい場合に、TOEIC(L/R)を採用の基準に用いていると大変なミスマッチが起こってしまいます。

こういった場合、採用条件をスピーキングやライティングのある「英検」や「IELTS」などに変更する必要があります。もしくは「TOEIC(S&W)」も良いでしょう。

自分が「仕事でどういった業務を担いたいのか」、という目標設定が第一で、その内容に応じた英語勉強が効率的です。ここがまだぼんやりしているうちは、やみくもにTOEIC(L/R)スコアだけを追い求めることは効率的な英語学習法ではありません。

手に持った懐中時計
TOEICで英語の瞬発力は鍛えられている、はず

TOEIC(L&R)で証明できる英語力はこの部分

「素早いリスニングとリーディングの力」
「単語力」

TOEICでは主にこの力を測定できます。

もしもあなたが就職したい企業の業務にこういった力を要するのでしたら、

「私のTOEICスコアは○○点です。よってリーディングとリスニングの正確な瞬発力があります。」

「そしてある程度業務上必要な単語力も持ち合わせています」

このようにアピールすると効果的です。

Author: 畠尾 正行

英語力ゼロから2012年にフィリピン留学を経験。その後は学校スタッフを経て留学カウンセラー。第二言語習得論など英語学習について見識を深め学習アドバイスを行なう。